研究紹介
Last updated: Dec. 2006

研究紹介
Research activity




DISC-Loop型 光パルス発生器
目的、目標
従来の各種モードロック型パルスレーザと大きく異なる「独自方式」を提案し、10GHzから160GHzと超高周波で高精度かつ実用的な光クロックパルス発生器および超高速デジタル光信号源の実現を目指している。

本方式により、モードロック半導体レーザ(従来の光クロックパルス発生器)が長年抱えてきた共通課題(=製造技術や長期信頼性の不足)を克服できるだろうと期待している。

DISC-Loop型光パルス発生器の特徴と長所
SMZ-DISC型超高速全光ゲートを「光信号偏光変換ゲート」として駆動し、ゲート出力をゲート入力へ正帰還して光リング共振器を構成し、さらに外部から連続光を注入すると、共振器内部に

『光クロックパルス列』

が発生する(図1、図2)。DISC型光ゲート内部の半導体光増幅器(SOA)を駆動する注入電流は、直流電流である。

本方式の長所は、(1) 従来のモードロック方式と違い、光干渉回路の内部遅延時間(=光学的に全く不活性な材料定数)が光パルス幅を決定する、(2) 構成部品は一般的な共通部品の組み合わせであり、過飽和吸収体などの特殊部品や微小活性領域を必要としない、(3) 光集積回路化・省エネルギー化が原理的に可能なこと、などである。

DISC型光ゲート単独の実験研究ではすでに周波数168GHz, 時間幅1.5psのゲート動作に成功しており、かつ、その時のゲート駆動光エネルギーは10fJ〜1fJと極めて小さかった(Jpn. J. Appl. Phys., 2000)。従って本方式のパルス発生器の潜在力は、160GHzを上回ると期待される。

関連する主な共同研究と研究プログラム
21世紀大学COE: コヒーレント光科学の展開
文科省科研費基盤研究
その外の協力企業・機関
NEC研究所、Pritel Incオプトクエスト、産業技術総合研究所 計測標準研究部門、アンリツ 光計測器部門、沖電気研究所、フジクラ 情報通信部門

最近の研究成果
初期の原理実証実験では、光パルススペクトルの中心光周波数成分が欠損し、特異な歪が発生した (Appl. Phys. Lett., 2001)。最近の研究により、光スペクトル歪みを取り除き、フーリエ限界に近い光パルスを発生することができた(図2)。光パルス波形(自己相関波形)の消光比も、顕著に増加した。なお、図2の離散的光スペクトル成分の間隔は、光パルス繰返し周波数に等しい10.4 GHzである。

図3は、光リング共振器を周回する光パルス成分に対する実効利得を閾値(0dB)前後に設定して観測した、一連の光パルス波形と光スペクトルである。原理から予測される通り、パルス周回利得を閾値以上に増やした瞬間にフーリエ限界光パルス列が発生した。

現在の各種基礎研究の段階では、集積回路化の優先度が低い。従って構成部品全てを光ファイバーケーブルで自在に相互接続した試作機(下記の写真)を用いて、基礎実験を進めている。










電気通信大学 電子工学専攻
超高速光ロジック研究室